2月上旬,東名高速を走ること3時間で我々が訪れたのは,吉田インターより車で10分の「フィッシングリゾート・ジュネス」。名川大井川の伏流水を利用して,4年前にオープンしたルアー&フライ専用の管理釣り場である。
 静岡県では河川内のルアーフィッシングが禁止されている場所も多く,その関係上多くのルアーマンがオープンからトラウトの元気なファイトを楽しみにこの釣り場を訪れている。
釣り場は止水タイプのポンドエリアで,池の総面 積は8000平方メートル。このタイプの釣り場としてはかなり広い。水深は最深部で2.2m,池の中央にある中洲に向けて徐々にカケアガリになっている地形である。また,地下120mから汲み上げた水は極めてクリアーで,魚の位 置が確認でき,表層の釣りをはじめとして,様々な釣り方が可能だ。
 肝心の放流魚種はレインボー,ブラウン,イワナ,ブルックの他,2月下旬からはBR> サクラマス,イトウも放流される予定。とくにサクラマスは40cmクラスも多いとのことで,期待が持てそうだ。今回の取材に間に合わなかったのが非常に残念である。
 また,このエリアでは「kuma」の愛称で親しまれているオリジナルスプーンやロッドなどもレストハウスで販売されており,もちろんこの釣り場のヒットルアーになっている。初めての釣行でも,アタリルアーを探す苦労がないのもううれしい限りだ。

 
     
 
今回の釣行はバッセルの渡辺輝さんと,フィールドテスターの井上さん,そして釣友の二宮さんが同行した。車を走らせている時から気にかかっていたのが風の問題。海から吹き上げる冷たい風が時折強く,車のサイドガラスにその強さを誇示していた。
 釣り場に到着すると我々の不安は適中。普段は底まで見通せるほどの透明度の高さだというが,この日は水面 で風がざわつき,サスペンドする魚の姿も肉眼では確認できないほど。今回は表層にサスペンドする魚たちを狙うつもりだったが,のっけから作戦変更を余儀なくされる状況だった。この釣り場の支配人である大澤さんの話では,この時期一旦雨が降ると,海から強い風が吹き荒れ,2日間は釣りに苦労する状態が続くという。釣り場が大井川の河口にほど近いのも,その理由のひとつだ。
 しかし,渡辺さんと井上さんには何か秘策がある様子で「風の日に適した釣りをお見せしましょう」とさっそくこの状況下における戦略を決定したようだ。作戦は「表層のナチュラル・リフト&フォール」と「中層のバイブレーション」である。
このエリアのポイントとして有望なのは,レストハウス前のワンド,その左側の水車周り,桟橋周り(桟橋上からの釣りは禁止),最奥部の水門付近など。しかし,井上さんがまず選んだのは桟橋を渡った中洲周り。井上さんによればこの部分が一番風が強く当たっており,水面 は道路に向かって左から右に激しく波立っている。この状態で「本当に釣れるの?」と疑問が湧いてきそうな状況である。ところが水面 をしばらく見つめていると,時折波間で派手なスプラッシュライズが起きる。その主はみな良型のレインボーである。井上さんは言う。「風が吹いている時は確かに釣りにくいですが,逆に表層の魚たちの警戒心が薄れて,普段にましてエサを追い回すケースがよくあるんです」。
 見てみると,確かにユスリカらしき虫が風に押されて左から右に流されていく。魚たちはそれを狙って激しいライズを繰り返しているのである。もちろん井上さんのターゲットはそうした警戒心の薄れた高活性の魚たちで,問題はそれをどうやって攻めるかということだった。
 
ここで井上さんが取った方法は,まず風上にスタンディング・ポジションを取り,ライズしている高活性の魚たちを狙う表層ドリフトの釣り方。ちなみにタックルは6フィートのバッセル・プレスター・スピンに2ポンドのバッセル・プレスターライン,ルアーは1.6gのエリアパッションである。
 ルアーをライズのあったスポットの風下にキャスト。素早くラインスラックを取り,軽くテンションを掛ける。そして追い風に逆らうように,ゆっくりと手前にリトリーブしてくる。この時大切なのは,テンションを掛け過ぎないこと。強い風が後ろから吹く形になるので,スプーンが風に煽られて浮き上がってしまうからだ。ポイントは,スプーンが波立っている水面 の少し下にあるような形を,絶えずロッドの角度とラインテンションで作り出すことである。
 井上さんは風の抵抗を上手く利用しながら,スプーンが浮き上がりそうになるとラインを緩めて,またゆっくりとリトリーブする動作を繰り返す。パールホワイトの視認性の良いスプーンが,リーリングと風の抵抗で上下にゆらゆらと動いているのが,確認できる。いってみれば,この方法は風を利用した表層のリフト&フォールである。通 常は意識的にアングラーがアクションをつけなければならないが,この場合はリーリングしたスプーンを風が押し戻してくれるので,非常にナチュラルにスプーンがアクションしてくれる。その動きを見ているだけで,すぐにでも魚が食いついてきそうである。
 果たして,先ほどライズのあった地点にスプーンが差し掛かった頃,スプーンの背後に黒い影が。固唾を飲んで見守ると,視界からスプーンが消えた。すかさず井上さんの鋭いアワセは入る。しかし,タイミングが合わなかったのか,ルアーは空を切って手前に飛んできた。トップウォーターの釣りと同じで,この釣り方の唯一の難点はアワセのタイミングが難しいことかもしれない。悔しがるのも束の間,井上さんは再びその方法で先ほどのスポットにキャストする。するとその前方で激しいライズが起こる。しばしの間合いを取った後,スプーンがそのスポットでリフト&フォールした次の瞬間,モワッと水面 に波紋が浮かび上がった。同時に井上さんのロッドがしなる。イメージ通 りの釣り方でヒットさせたことに井上さんの顔はほころび,引きを楽しみながらランディングしたのは,コンディションのいい40cmクラスのレインボー。
 井上さんは,この後も同じ方法で次々と良型のレインボーやブルックトラウトをヒットさせた。強い風を逆に利用した巧みな技には,魚たちも恐れ入ったようである。
 
 
一方,渡辺さんはその間,レストハウス左側の水車周りにポイントを絞り黙々と釣りをしていた。見ると水車の後方にキャストしてカウントダウン。その後,ゆっくりとリトリーブしながら,時折ロッドを左右に揺らしている。
 渡辺さんによれば,風の強い日は表層にサスペンドしていた魚が,中層に群れることも多いという。活性の高い魚は警戒心が薄れて表層に出てくるが,水車周りなどの誰もが攻める場所では,沈むケースが多いようである。もちろん,渡辺さんのターゲットはそうした低活性の魚たちである。「難しければ難しいほど燃えてくる」という渡辺さんだが,ハイプレッシャーで,なおかつ,中層に沈んだ魚たちをどうヒットさせるのか,非常に興味深いところだった。
 渡辺さんのタックルも6フィートのバッセル・プレスター・スピンに2ポンドのバッセル・プレスターライン,ルアーは1.2gのエリアパッション,カラーは水色に合わせてグリーンを使用していた。
 風が強いので,低い弾道でルアーをキャストするため,渡辺さんはしゃがみながらキャスィングをする。スプーンは水車の少し沖に着水する。フリーフォールでカウントダウン4〜5でリーリング開始。スピードはデッドスローだ。ルアーが水車の作り出した流れの切れ目にかかるあたりから,渡辺さんはグリップの先端付近に人差し指を添え,左右にチョンチョンと動かし始めた。ミノーで行うトゥイッチングが縦のロッドアクションだとすれば,これは横に動かす方法である。ロッドティップが左右に揺られ,スプーンに微妙な動きが与えられているのは間違いない。渡辺さんはこのテクニックを「バイブレーション効果 」と呼んでいる。

 
何度かのアクションづけの後,ロッドワークとは違う動きがティップに伝わった。素早く渡辺さんの鋭いアワセが入った。次の瞬間ロッドはきれいに弧 を描き,ほどなくして腹がパンパンにはったブルックトラウトが上がってきた。
 渡辺さんがいうには,スレたトラウトたちは縦の動きには慣れてしまっているものの横にスライドするアクションには比較的よく反応するそうだ。しかも,ミノーならともかくスプーンでこうしたアクションをつけるアングラーは少ないので,非常に効果 的である。
 
一度魚の群れているスポットが分かれば,後は話は早い。渡辺さんは同じ方法で,次々と水車周りの魚たちをヒットに持ち込んだ。表層に群れる魚ならば,スプーンのサイズを落とせばそこそこには攻略が可能だが,中層にサスペンドする魚をヒットさせるのは難しい。これも風の日ならではのテクニックのひとつだろう。
 午後になるとますます風が強くなり,さすがに釣りはままならない状態になったため,この日の釣りを終了することにした。しかし,今回披露してもらったふたつのテクニックは,風の日にはぜひ覚えておきたい裏ワザである。
   
使用タックル
ロッド:バッセル・プレスタースピン6フィート
リール:ダイワ・シルバークリークX1500
ライン:バッセル・プレスター2ポンド
ルアー:バッセル・エリアパッション1.2g/1.6g  プレスター2.1g 他
   
フィッシングリゾート ジュネス
住所:静岡県志太郡大井川町利右衛門115
電話:054-622-7123
営業時間:6:00〜21:00
料金:1日券4000円(6:00〜17:00)
   午後券2800円(12:00〜17:00)
   ナイター券2800円(17:00〜21:00)
   午前券2800円(6:00〜11:00)
アクセス:東名高速吉田インターからR150経由で約10分